DIREMMA

 仰いだ天球が歪んで見えたのは、じわりじわりと瞳に滲んでくる感情の発露の所為だ。
 雲がゆらりと、まるい空がぐらりと歪んだ理由が、誰に説明するでもなく、頭の中で自動的に流れた。
 本当にくだらない虚勢が、所謂、涙と呼ばれるそれを、そのものだと認めさせなかった。
 米神を滑っていく瞬間は酷く熱を持っているように感じられるのに、通り過ぎてしまえば、風に晒されて冷たい。
 髪の間を水滴が通っていくのがくすぐったかった。

 感情が何処へ向いているのか、誰を指しているのかは全くわからなかった。
 哀しいのか腹立たしいのか悔しいのか嬉しいのか愛おしいのか、そのどれもが正しいようで、間違っているようで、考えている端からそれらの感情すべてが目の淵から零れ落ちるようだった。

 ふわりと流れてきた静かな風に肩を押されて、そのまま仰向けに倒れる。
 耳元でくしゃりと草が倒される軽い音がした。
 そして漸くこの場所が暖かい草原だったのだと気づく。
 自らの髪が僅かに碧空に被り、日に透けて見えて、それが凄く、何故だか凄く、悔しいような気がした。


この身体は、照りつける慈母の光を受け止めきれてはいないのだ。




世界はこんなにも美しいのに
それを映すこの瞳の
この身体のなんと醜いことか